VPT(Vital Pulp Therapy) 抜髄回避治療
深い虫歯でも神経を取らない治療法
VPT(Vital Pulp Therapy) 抜髄回避治療
2023年度 当院での成功率100%(経過観察期間6ヶ月〜12ヶ月以上)
VPT(深い虫歯でも神経を残す治療)
神経を取る選択には慎重になって下さい!
健康な歯の内部には歯髄細胞という細胞群があり、根の先からの毛細血管から血液供給を受けて生きています。
通常、この細胞群は「歯の神経」と通称されますが、実際には糸のような神経繊維ではなく、肝臓や腎臓などと同様に歯髄細胞という細胞の集団です。
虫歯が進行すると、治療のために虫歯部分を削って除去する際に歯髄細胞が露出し、内部から出血することがあります。一般的にこのような状況では、内部の細胞を取り除く「抜髄」と呼ばれる『神経を取る』治療が行われます。
しかし、歯は一度神経を取り除くと血流を失い、組織が死滅してしまい、その結果、寿命が短くなります。アメリカでの統計によれば、神経を失った歯の平均寿命は約10年であり、将来抜歯となり入れ歯やインプラント治療が必要となるリスクが高まります。
このことを考えると歯科医師は安易に神経をとることなく、可能な限り神経を残す努力をすべきなのですが、残念ながら保険治療で可能な手法では取らざるおえないのが実情です。
当院では、このような状況においても、安易に神経を取り除くことなく、神経を残す可能性の高いVPT(抜髄回避)と呼ばれる治療法を行うことで、多くの神経を温存するよう努めています。
このような処置を可能にしているのも、マイクロスコープやラバーダム防湿法、MTAセメントを使用するからにほかなりません。
MTAセメント(根管充填・抜髄回避治療)
Mineral Trioxide Aggregateの略で、アメリカで既に1993年に開発されたセメントです。海外ではさまざまな臨床応用が認められていますが、日本では2007年に覆髄材としてのみ薬事認可されました。
主成分は、一般的に建築材料として使用されているコンクリートと同じです。湿潤下でも硬化できることと、固化時に放出される水酸化カルシウムが殺菌能力と歯の再石灰化促進作用を有するという、他のセメントにはない特別な作用を持っています。
MTAセメント(根管充填・抜髄回避治療)のメリット
従来は抜歯適応だった歯を抜かずに済む
生体との親和性があり、拒絶反応を起こしにくい素材
細菌に対する殺菌作用が期待できる
歯との密着度があり、細菌の侵入を食い止め再発を防ぐ
抜髄回避治療についての動画紹介
虫歯を削って行くと、歯の神経(歯髄)の入っている部分とつながり、出血を起こしてくる事があります。
この状態を露随(ろずい)と言います。
従来の考えでは露随してしまった歯は炎症を起こしてしまうので、神経を取る治療(抜髄)が適応とされて来ましたが、マイクロスコープを使用した精密な治療とラバーダム防湿法を用いた無菌的治療、最新のMTAセメントの3つの要素を駆使することで、80%以上の神経は露随しても取らずに残せるようになりました。
ただし、この治療を成功させるためには、細菌に汚染された象牙質を顕微鏡レベルで取り残しなく精密に除去すること、事前から患部を細菌だらけである唾液に一切触れさせないラバーダム防湿を用いた無菌的な治療を行うこと、MTAセメントで封鎖する前に確実に出血を止めることなど、さまざまな知識と技術、経験が必要でどうしても処置に1時間程度はかかります。
また、露随は事前に予測不可能な場合もあるので、虫歯治療を行う際にはには常に露随に対応可能な準備を整えた上で治療を始める必要がありますが、治療時間におわれている健康保険の診療では、マイクロスコープを用いた精密治療やMTAセメント、ラバーダムの使用も出来ないので露髄=抜髄となり、安易に神経が取られています。
健康保険の手法で安易に神経をとってしまうことのデメリット
神経をとると一時的に痛みからは解放されますが、その影響はその後一生の健康問題に発展します。
1歯の寿命が短くなります
多くのの研究により、神経を取ってしまった歯の平均寿命は10年前後であるとされています。
現在40代の方ですと50代以降にその歯を失う可能性が高まります。
抜髄=10年後の抜歯のリスク ととらえて下さい。
2成功率が低い
最新の治療法で行われる神経を取る治療の成功率は80%以上ですが、日本の保険治療で行われる神経を取る治療は手法が古いだけでなく無菌的治療が行われないので成功率は50%前後です。
無症状な事が多いですが、5年後半数の歯の内部に細菌感染を引き起こし根尖病変が出来ていています。
歯の内部で増殖し続ける細菌は、再治療を受けるまでずっと、歯の根の先から血流に入り、続け全身にまわるので、動脈硬化が進行しやすいなど、見えないところで全身の臓器に影響を与え続けます。
*神経を残す治療にはMTAセメントの他、水酸化カルシウム、また、日本のみですがドックベストセメントが用いられていますが、世界的な研究論文が最も多く、成功率が最も高いのが当院で採用しているMTAセメントを使用した治療法です。
幸運なことに、2023年のトラビネジャッド教授の来日に伴い、私自身も開発者ご本人による最新情報や臨床例の講義を受講させて頂く機会を得ました。
MTA(Mineral Trioxide Aggregate)セメントとは?
開発者
Loma Linda大学歯内療法教授トラビネジャッド教授
2003年~2004年にはAAE(アメリカ歯内療法学会)の会長を務められるとともに、これまでに、300以上もの研究論文を発表され、歯内療法の分野で最も頻繁に引用された論文の著者でもあります。
成分
歯の成分に含まれるカルシウム(二酸化ビスマス・ケイ酸二カルシウム・ケイ酸三カルシウム・アルミン酸カルシウム・石膏)を主成分とした歯科用セメントです。
生体親和性が非常に高いだけでなく、殺菌効果も非常に高く、虫歯の不活性化をはじめ、神経の保護や根管の内部を埋める根管充填など、様々な処置で使用されています。
当院で使用しているMTAセメント(バイオセラミックセメント)
プロルートMTAセメント | エンドシーケンスバイオセラミック |
MTA(バイオセラミック)セメントを使用した神経を残す治療
ラバーダム防湿、マイクロスコープを使用したカリエス除去 MTAセメントによる露髄部の封鎖
セラミックによる最終補綴物
治療費用 ¥285,000〜 来院2回