歯周病とは

   

前回はお口の健康と全身の健康との間に密接な関係がある事を最新トピックスを交えてお話しさせていただきました。
歯周病のお話をさせていただきます。

歯周病は歯を取り囲む歯肉の炎症が歯を支えている骨にまで及ぶもので、放置すると歯がぐらぐらになり抜け落ちてしまう疾患です。
症状もなく密かに進行するので気がついた時には重症化していることも多く、『サイレントキラー』とも呼ばれています。

お口の中は約700種類の細菌が、2割の善玉菌、7割の日和見菌、1割の悪玉菌といったバランスを保ちながら歯の表面に膜状に付着しバイオフィルムという状態で生息しています。このバイオフィルムの細菌が増えすぎると細菌のバランスが崩れ悪玉菌が増加します。すると日和見菌までが悪者に変わり、歯茎の炎症が進行しついには歯を支えている歯槽骨の吸収が始まります。これが歯周病です。

歯周病の全身への影響は、前回お話しした糖尿病以外にも明らかになってきています。

歯周病の原因菌の一つPジンジバリス菌は、血液中の鉄分を栄養源にします。出血しやすい歯肉では増殖力が高まり、歯周病増悪の中心的な働きをします。この細菌の出すジンジパインと言う強力な酵素は白血球などの免疫細胞を撹乱し強い炎症反応を引き起こす作用があります。この影響で血糖をコントロールするインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなります。これが前回お話しした歯周病が糖尿病へ与える影響です。また、糖尿病の方は高血糖の影響で細胞の治癒力が低下していますので、歯周病が悪化しやすく治りにくくなります。これが歯周病と糖尿病が相互関係にある理由です。

先程のPジンジバリス菌のもつジンジパインと言う酵素、恐ろしいことに細菌を血管内に侵入させる力もあります。実は、このPジンジバリス菌、心筋梗塞を引き起こした血管の血栓中やアルツハイマー型認知症患者さんの脳髄液からも検出されています。マウスの実験ではジンジバリス菌に感染させると、脳内のアミロイドベータが増加し脳神経が傷害されることが明らかになり、認知症の原因の一つではないかと研究が進んでいます。

 

如何ですか?
日常のブラッシングが歯はもちろん、命を守るためのものであると言っている理由、ご理解いただけたでしょうか?

ブラッシングは心臓やあなたの記憶を守っているのです。
実はこのジンジバリス菌、歯周病だけでなく神経を取った歯の根の先にできる病巣にも生息していますので、神経を取った歯にもこのようなリスクが潜んでいるということになります。

 



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